2009.02.01 体力仕事とペン仕事


静岡でのコーディネートに向け、いよいよ我が家の荷物を発送。午前中に着予定だった最後の荷物を入れ、梱包&箱詰め作業が完了。コーディネートする部屋別に段ボールにまとめたので、現場では多少、楽だろう。段ボールは結局、計8個+α。ヤマト運輸の方に玄関まで取りに来てもらったが、それでも各アイテムの区分けから梱包、段ボールへの箱詰め、玄関までの運び出し・・と、していたら、くたくたのへろへろだった。そしてあっという間に夕方になっていた。

昨日もあまり寝ていなかったので、食後に仮眠。

しばらくして起き、産経新聞で2月から書かせていただく連載『H O ME&DECO』の原稿を書く。新連載は「身近なもの・具体的な商品の紹介を」というテーマがあり、今回は先日試したばかりの、N.Yのランドリーブランド『ザ・ランドレス』を取り上げることにした。ほのかで大人っぽい香り…等々紹介、原稿を書き終え、2時半ごろ床につく。

 

 

2009.02.02  東京出張


5時半に起き、7時半の飛行機で東京へ。いつものように羽田空港の「DEAN&DELUCA」で朝ご飯を食べながら一息ついて、ぼちぼち移動する。昨夜あまり寝ていないせいか何だかしゃっきりしない感じ。飛行機でも爆睡であった。

明日のコーディネートにまだ買い足したいものがあったので、うろうろする。コンランショップでクッションカバーなど購入。クッションカバーは値段がピンキリだけど、質の高いものと安いものは、クッションを入れてみると、その差が歴然とする。同じ中綿を入れても、高いものは隅々にまで張りが生まれるのだ。関西弁でいうところの「値はタダとらんなぁ」である。


19時から打ち合わせで文化出版局へ。「装苑」で記事を書かせて頂くことになり、編集長のKさんに会いにいく。文化出版局は、いちばん最初にお世話になった出版社ということもあって、懐かしくて、初心にかえるというか、気持ちがしゃんとする。編集の方々も、クリエイターとしての姿勢をもってられるので、私としてはものを作る人同士で話すときのような心許す感じと、それゆえのぴしゃりとした緊張感があって、居心地がいいなといつも思う。

久しぶりにお会いする編集長のKさんは、筋金入りにおしゃれな方で、今日もライトグレーのタートルにダークグレーのブーツ、それに箔押しのようなシルバーのワンピースという、とてもセンスのよい出で立ちだった。

原稿内容である「独り暮らし」について話をしながら、話は右へ左へ脱線、私が敬愛してやまないファッションスタイリストの大森大森イ予佑子さんの金沢21世紀美術館のお話を聞いたり、Kさんが住んでらしたお家について聞いたり・・あっという間に時間が過ぎて、気づけば21時だった。

明朝の移動を考えて、ホテルは東京駅近くにした。リノベーションしたホテルは居室もベッドもきれいになっているので過ごしやすいけど、水回りだけ古いユニットバスを使用していることが多い。トイレに行こうとドアをあけるたび、古めかしいビジネスホテルっぽくて、「ここもきれいだったらもっといいのにな」といつも思う。リフォームも水回りに手をかけると「コストが跳ね上がるから仕方ない」ということを重々理解した上で、全部を入れ替えずとも見えがかりだけでもよくなる方法ってないのかなぁ? と考える。

 





2009.02.03  設営


朝、東京から新幹線で移動して、設営現場の静岡へ入る。ハウスメーカーさんの担当者さんと9時半に駅、集合。いざ格闘のリングへ。

どんな現場でも、午前と午後では「こなせる作業量」が格段に違うので、午前中の動きかたは大事である。家具の組み立ては業者さんに任せ、私は自ら発送した段ボールを次々に開梱。設営場所が1Fと2Fに分かれて、計3部屋だったので、階段を上り下りしながら、びゅんびゅんとセッティングしていく。

1Fの一室は、若い女の子がワンルームで住むという設定。赤を利かせながら、ナチュラルにまとめたコーディネート。ソファを赤にしたので、それだけが浮いてしまわないようアイテムの数やラグで見た目を調整した。どのカーテンにするか現場で最終確認する。柄物のカーテンを選んだのだが、かけた時のあの「おおっ」という感動。部屋があか抜ける瞬間を目の当たりにすると、ぞくぞくしてアドレナリンがいっぱい出てる(と、思う)。

2Fの一室は、ややリッチめな男性の単身生活と、夫婦住まいのベッドルームという想定のコーディネート。独身リッチのほうは、「すでにあるソファを使って欲しい」との注文があり、それを軸にラグやテーブルなど、合わせるものを組み立てていった。ラグとの色が厳密にあうかがポイントだったので、いちばん最初に飛んでいって確認。黒のシャギーラグとグレーがうまく合っていて、一安心だった。

ベッドルームは、ベッドスプレッドから枕までの「色つかい」をどうするか。壁の色がダーク系のブラウンなので白から淡いモスグリーンでまとめ、オレンジを差し色にした。ポイントはどのあたりまで色を足すかで、クッションを置いたり、床のラグを足したりよけたり、バランスを検討して、ちょうどいいところで手を止めた。

今回のコーディネートは最終的にカタログにも載るそうなので、課題が三つあった。まず、壁に色がついていたので、それを生かすこと、3部屋の住人の特徴が出ること。そして生活感があるコーディネートであること(これは私が設けた課題)。

夕方、3つの部屋を完成させ、冷静な目で(それまで作業でてんてこまいだったので)部屋をチェック。先の課題はまずますクリアしているなと一安心した。さらに、終始、手伝ってくれていた担当者さんが、完成した各部屋を見て「いいですよ〜これ!」と、喜んで下さって、その言葉に安堵を深めた。どの仕事も、まず担当の方から「良いですね〜」と、ひとこと漏れ出るような内容でないと、と思う。

あれこれ後片付けをして夕方18時、静岡からは新幹線で帰阪。この日のために、探し、選び、悩んだっ!長い長い1日が終わった。


 1Fの女の子部屋。先日描いた絵もセットして

 


 

2009.02.04  豊かな人


夕方、郵便局へ行ったら、ATMにおつりを忘れたという老人が入ってきた。ひょろりとした80歳くらいおじいさんは、人生初の「ATMを利用した振込」をしてみたが、おつりを取り忘れたまま帰ったらしい。郵便局から電話で連絡を受け、取りに来ていた。

「私、はじめてのこって、緊張してましてんなぁ」と品のいい関西弁で話した後、「お手数かけてすんまへんでしたなぁ、ほんまに」と何回も局員さんに頭を下げていた。
そしておつりを受け取ると、「はい、これお詫びに」と、ガラス瓶いっぱいに入った、庭咲のような水仙を差し出したのである。局内に「わぁ」と黄色い声があがり、局員さんがおじいさんのまわりに集まった。それぞれが水仙の匂いをかいだり、「私花粉症やからわからへんわ」と言ったり、その場が一瞬にして明るくなった。にこやかな顔があふれたところで、おじいさんは「ほな、すんまへんでした」と言い、さらさらと砂が消えていくように去って行ったのだった。

ほんの一瞬の出来事だったが、小さくも胸を打つ出来事だった。なんと心豊かな老人だろうか。おじいさんが自宅の水仙を持参したこと以上に、お手数をかけた相手に、明るい気分を与えたことが素晴らしいのだ。人を笑顔にしたり、場の空気を明るくしたり。「何を」ではなく、「どういう状況を」与えるか。そこが豊かさなのだろう。
そして、常々そういうことを積み重ねるからこそ、あんなふうに粋な行動が自然にできるのだ。若造にはまだまだ真似できない領域であった。

夜は先月に続き、『チェ39歳 別れの手紙』を観に行く。ストーリー展開や音楽ではなく、ビジュアル=映像のみで感じさせていく不安や焦燥。音楽もさほどなく、1作めと同様、淡々と話が進み、そして最期の時へと向かっていくのだった。『28歳の革命』でチェを英雄視して描かないのは、この2作めがあったためで、脚本を書いた人の愛情がうかがえるようだった。ぜひ2本セットで見るべし。

見終わって、切ない気持ちを抱えながら、ちちろん、2人でいちゃついたりすることなく帰る。

 


 

2009.02.06  掲載誌が届く


先月、お仕事させて頂いた『日経WOMAN 3月号』が、冊子となって届く。巻頭の特集が「働く女性のひとり暮らし、ひとり時間」、35ページにわたる、とてもしっかりした内容だった。読者のお宅も、間取り図が正確だったり、物件概要から住人の方々の年収、毎月の家計簿に至るまで掲載されていたり、さすがは新聞社だなと思う。全体に漂う「しっかり感」。一読者として「そうなんだ〜」と面白く読んだ。

雑誌のお仕事では、企画全体のテーマと、私が担当するページについては詳細をお聞きするけれど、サンドイッチされる前後のページがどんな内容でどんなデザインなのか、他のページについてはほとんど知らない。冊子になってはじめて、全容がわかるのだ。だから、掲載紙が届くときはそんな未知との遭遇感もあって、かなりドキドキする。

今回は、4ページが私の担当。イラストも描かせて頂いていた。しっかりした特集の中で、いいふうに扱って下さってて、担当の方に感謝である。

 


 


2009.02.11  USJへ

去年、気まぐれで買ってみた「USJ年間パスポート」。「気持ちが行き詰まったときいい気分転換になるだろう」と彼とふたりで買ってみたが、いざとなると行ける機会がなかなかなく、今日が最終日になってしまった。

夕方からふたりで出掛け、「やはり来てみると楽しい」とはしゃぐ。視界に入るもののスケールが大きいと、気分もぱっと明るく変わる。
それにしても、ここの建物や諸々が全部「つくりものなんだ」と思ったら、感心しきりである。このタイルは珍しいサイズだなぁ、アメリカの規格? この柱はどういう発注をしたんだろ? この木に見えるのは何で作るの?・・とかとか。アトラクションもさることながら、町並みを歩いているだけで、興味はつきないのであった。

『バックトゥザフューチャー』に乗って、『バックドラフト』を見て。そして、最後はやはり・・ということで、『E.T』に行き、「ゆき〜」とラブコールを送ってもらい、シメとした。

スヌーピーはバレンタイン前ということで、イチゴとコラボーレーションなのだそうたが(写真・右)、私にはどうも朝香光代さんとかが被ってそうなマドロスちっくな帽子に見えて仕方なかった。幼気なスヌーピーであった。



 


 

2009.02.15  バレンタイン饅頭


昨日渡せなかったバレンタイン饅頭を朝から作る。最近こういった愛や恋のイベントごとはだんだん、本来の主旨から遠のいて、どんだけ「無茶ぶりに応えるか」に焦点が絞られている。

一昨年は彼が「誕生日には、緑色のケーキが食べたい」と、言い出した。「緑、なんじゃそりゃ? ええっと、緑、緑、緑?」と、考えあぐねたが、母が「木の芽和えの時、木の芽だけじゃ色が足りないから、ほうれん草を入れる」といってたのを思い出し、結局ほうれん草を駆使した緑ケーキをつくり上げた。彼には一矢報いたが、そんな調子で悪ふざけ化が進んでいる(そして、今、冷静に考えると、緑なら抹茶だろう…)。

今年のバレンタイン饅頭も彼の無茶ぶりに応えるべき代物だったが、お昼すぎにはなんとか焼き上がり、箱詰めして渡した。十二分な出来に、彼は大爆笑、そして意外なことに、食べてみるとなかなかの美味だったので驚いた。あんとさつまいものバランスがよく、お茶うけに最適な味。ああこれなら普通に作って食べたいよね。と言い合いながら、今年のバレンタインも無事、終了した。

 16分割される、バレンタイン饅頭の生地


 

 

2009.02.16  見飽きる

夜、NHKで再放送していた『沸騰都市 シンガポール』を観る。この番組は、国境の意味が薄れた現代では、国ではなく「都市」が中心であり、そこで様々なものがせめぎ合って起きるエネルギーで「沸騰した」都市の姿や試練を追うというもの。ドバイやロンドンなどがあり今回はシンガポールだった。

番組での1シーン。シンガポール首相が海外から来る出稼ぎ労働者を「彼らはバッファー(防御弁)だ」と言いきるところがあった。必要なら期間を決めて受け入れるが、不必要ならいっさい受け入れない、と。それを聞いた外国記者は非難の声をあげる。すると、「自分はシンガポールの首相で、国民に選ばれたのだ。だから国民の利益を優先するのだ」と、即座にきっぱり突き返していた。

何だろうか、日本とのこの違い。「政策の良し悪し」の前に、自分の主張がなんたるかを固める。人前に出るとき、それは基本ではないだろうか。誰しも人前に出る前には、悩みがあって事情があって、混乱があって選択を強いられる。しかしそれをまとめて一本道にするのが、人前に出る時の役目であり、責任だ。
シンガポール首相の応対には、バッファーの考え方以前に、一国のリーダーとして「世界で渡り合える強さ」を感じたし、日本の政治家ががその部分で立ち後れていることを、思わずにはいられなかった。

連日、政治がらみのニュースを見てて思うが、固まっていないものをごにょごにょやられても、見てるほうはよく解らないし、それがいつまでも続けば、関心はいつしかそれてしまう。もう誰が何を言ったとか、前言を撤回したとか、しないとか、いいかげん見飽きちゃったよ〜。

 


 

2009.02.20  ホワイトプラン

前から気になっていた壁の一部を白く塗る。ローラー片手に、楽しい作業だった。詳細はまた今度。

 


 

2009.02.22  原稿

『装苑』の原稿を描き始める。イラストを描く時、原稿を書く時、図面で数字を割り出す時、仕事にはいろんな時間があるが、原稿の時がいちばんピリピリしている。

ほんの1,2年前まで、原稿は一人っきり書きたくて仕方なかった。たとえ彼であっても、気が散って書けないと思っていた。しかし、最近は彼が居ても平気だし、途中で話しかけられても気にならなくなった。彼は私が原稿を書いていると気づくと、ヘッドホンをして自分の気配も消してくれるし、お互い、集中の度合いを「今から、レベル3だから」とか言って、共有するようにしている。私もうまくまとまらず、書けない苛々を表に出さないように努めている。

この事でもめた時期もあったが、人は相手を思いやれば、それぞれ変わるんだと思う。そう思うと、夫婦は早合点で諦めてはいけないし、いつか変わる時まで一緒に居られるのが、結婚というシステムの良い点だなぁと思う。

 


 

2009.02.25 うれしい知らせ 

今朝、文化出版局の方から増刷のお電話が入る。これで9刷となった。出版業界のことを少し知るようになって思うが、5年も前の本が書店に並ぶことさえすごいことなのだ。うまく言葉で言えないのだけど、本当に本当に、感謝の気持ちでいっぱいで、有り難いなと思う。HPの「5周年記念」でも書いているけど、皆さん有り難う!

夜は、たっぷり作っておいた粕汁を堪能。粕汁を食べるのは関西だけと聞いて驚いたが、これを食べると冬だなと思うし、テンションがあがる。子供のころ、母親が冬の間、幾度となく作るので、「また粕汁〜?」とぼやいていたが、母親があれほどやっけになって作っていた理由がよくわかる。大人には美味しくてたまらない味なのだ。そしてわざわざ、日記に書きたくなるほどの出来事なのである。

 

 

2009.02.26  家守

ずっーと雨ばかりが続いていたが、今日は久しぶりに朝から晴れ。これはチャンスと、仕事は午後からにして、朝からいっきに家事をする。洗濯をして、掃除機をあて、買い物に行って。

その勢いで、ベランダを掃いていたら、物陰からなにやら動く影。はっとしたら、ヤモリが壁をぺたぺたと移動していた。なんとラッキーな。どうぞ、家をお守りくださいまし。有り難く思い、ヤモリの居場所をすっきり掃除しておいた…が、よく考えると迷惑だったかもしれない。


 レーズンっぽい色の家守。

 


 

2009.02.27  森先生


yahooで、数学者の森毅先生が「大やけどで重体」とのニュースを見る。
祖母が昔、火傷をして大変だったことがある。その時、老人の火傷が非常に危険ものだと知ったので、老人の火傷と聞くととても気にかかる。ご回復を心より願うばかりだ。

森毅先生の本では、「チャランポランのすすめ」が好きだ。20年ほど前に読んだ本だが、すらすらと読ませるのに、内容は実に濃い。少し引用、

「「味方」が死んだから反戦なのではなくて、「敵」も死んだから反戦なのだ。」
「おかしな意見もとりこみながら、自分の意見を作っていけばいいのであって、そうした自分の作ることのできない自身のなさが排除へ向かっているのではないか。」

軽いのに、強く正しくて。25年以上前に書かれた文章なのだが、今読んでも新鮮で、逆に今の時代にこそ読まれるべき内容だなぁと思う。

 


 

2008.02.28  逃げた二月

産経新聞『H O ME&DECO』の〆切が月曜なので、そこで使う写真を撮る。この記事では、メーカーやショップからの提供写真をお借りするのだが、今回は思っている雰囲気の写真がなく、自分で撮ってみることにした。手を動かすのは何であっても楽しいのだが、写真はこんなふうに撮りたいと思っても、なかなか思い通りに仕上がってくれず、うーんと悩んでばかりだ。写真は今後の課題だな。

ちなみに今回、紹介する商品は「Chiliwich」の「バブルブレースマット」。自宅でも使っているが、工業製品として実によくできた商品だ。先日、アクタスをのぞいたら、色が白、黒からさらにグレーやカラフルなものまで増えていた。

今日で二月が終わる。早い、やはり二月は逃げるだ。