商品開発から、はじまりましたこんなふうにスケッチを描いたりこつこつ図面を書くこともふだんのしごと、商品開発。書籍や雑誌以外でも、インテリアに関わる仕事があります。今回は商品開発についてお話を。 私の仕事のひとつに、商品開発への参加があります。これまでもハウスメーカーや家具メーカー、通販メーカー……住居に関わるメーカーで、商品の開発に携わってきました。時にデザインコンサルティングであったり、商品のアイデア提供であったり、はたまたコーディネートや図面をひく実務であったり。 雑誌や書籍の仕事にくらべると、名前が出ない分、“裏方”のような仕事ですが、私にとっては、インテリアへの知識や根本を培っ てきた、大事な仕事です。


最新のプロジェクト今、発刊中の通販カタログ、『Remie style』2011夏号(ベルメゾン(千趣会))で、キッチンカウンターのデザインコンサルティングをさせて頂きました。ベルメゾンさんとは今回がはじめての取り組みで、カタログにはイラストでも登場しています。  キッチンカウンターということで、企画のはじめにお伝えしたのが「お母さんの『場所』にしたい」ということでした。キッチンは作業の場で、ダイニングは家族の場です。キッチンもダイニングも、お母さんが活躍する場だけれど、ただ、あわただしく働くばかり。そこに個人的な楽しみや、わくわくするような余裕やスペースはありません。 忙しく行き来する、キッチンとダイニングの間=キッチンカウンターに、すきなものをちょっと置く、ちょっと飾る場所にする。お母さんの気分がふっとほぐれる場所にしてはどうだろう?と、提案しました。収納が増えることも嬉しいけれど、それ以上に、自分のすきな場所があるというのは、家や家事に対する前向きさを支えます。そういう場所をつくる家具がいいなと思ったのです。 開発では、サイズやカタチを考えることも勿論ですが、商品のストーリーや方向性を考えるのも、大事な役割です。コーディネートする商品を集めたり収納力がふえ、目隠しにもなって、かつダイニング側は飾ることができるカウンター区切りのないDKタイプのキッチンでは、散らかったモノもすべて丸見えになります


 西へ東へ。あれやこれやと、奔走.コンセプトに関わるだけでなく、実際の商品を考えることや仕様の検討、商品チェック、インテリアコーディネートなどもします。コーディネートでは、目的に応じて、商品を買い、集めて、現場に設置もします。設営の日は、何箱も段ボールをあけまくり。永遠に続く肉体労働に気も遠くなりますが、それでも、できあがった部屋を見ると、疲れがいっきに吹き飛ぶほどの爽快感です。  実際に、市販の商品を探して組み合わせるので、「コーディネートしやすい本棚はこれだな」「使いやすい色柄はこんな感じだな」肌で感じながら、商品を知るいい機会になっています。  商品を考える時は、サイズや仕様の決定が主な仕事です。開発スパンも長いので、じっーくり腰を据え、あれこれ検証して確かめながら、進行します。試作チェックする段階までくれば、ゴール目前。「この棚板、もう少し厚みをもたせられませんかね?」「うーん、コストが合わないですね」といったラリーを延々とつづけながら、最終いいデザインになるよう、折り合う点を探していきます。  開発の現場は、いつも「誠実」で、私はとても好きです。「コストを抑えたんだから、これで仕方ないんじゃない?」なんて易々と言ったりしないし、適当にやっつけることもしません。たとえ面倒でも、よりよくしようと、皆が奮闘しています。誰が使っても大丈夫なように。満足できるように。見えない相手を思って、  誠実にモノをつくる。私が開発の仕事をすきなのは、そういう姿勢がきちんとあるからです。<br>
4カタログへの参加以前は、商品だけに携わっていましたが、最近は「それをどう伝えるか」、カタログへの参加もさせて頂いてます。雑誌や書籍でも「もっと言いたいことがあるのになぁ」と、いつも限られるスペースを恨めしく思うのですが、カタログでは、さらにスペースがコンパクトなので、言うべきことを極限まで絞らないといけません。開発の経緯を見ていれば、商品のあれもこれも言いたいとなるけれど、やはり読む人に魅力が届くよう伝えないといけません。どこに焦点をあてるか、何が人の心に伝わるか、そこを見極めながらイラストを描き、誌面に落としていきます。
書籍や雑誌の仕事でお会いする方は、「開発のお仕事なんかもされるんですね」と、たいてい仰います。誌面の仕事は表に出やすいので、そちらが本業と思われるようです。違うんですよ。むしろ雑誌や書籍は、ずいぶん後からのことなので。私は毎回、そんなふうに補足します。  書籍の仕事をはじめたのは、商品開発では、伝えきれないことが多いと思っていたからです。たとえばリビングの収納家具を一つ考えれば、モノのしまいかた、TVとの関係、室内での設置、あらゆることを検証します。けれど、商品になってしまえば、そこで考えた知恵もメソッドも、すべて商品のなかにとけ込んで、消えてしまいます。それが生活者のためのデザイン、デザイナーの仕事というものですが、この消えてなくなった部分をダイレクトに伝えれば、もっとみんなのためになるんじゃないのかな。そんな想いがふくらんで、商品開発から、一冊の書籍にまとめる。というふうに活動を広げました。 これからも、このスタンスでの仕事が続きそうです。インテリアの現場で感じたことを書籍や雑誌などにフィードバックし、はたまた読者の声や不満、リアルな生活をメーカーの開発へ。相乗効果の波を起こしながら、全体がよくなるようにがんばらねば。  今後はもう少しラフなものづくりも温存中です。スケッチを描くように、自分の部屋に合わせるみたいに、考えた柄物のカーペットやファブリックなどなど。世の中、シンプルゥ?で四角い商品が増えたからでしょうか。住まいがもっと楽しくなる、ビビッドなことをしたいなと思います。夢は広がるばかりです。
でっ てなてな具合になかなか時間も取りにくく、このページの更新も遅れてしまいますが、またまたお時間あれば覗きにきてください。行って戻って、また行って。商品開発と書籍。


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