「ふたり暮らし」だからこそ、必要なもの
独り暮らし、ふたり暮らし、結婚、新築……人生において住形態が大きく変わる時は、インテリアをゼロから立ち上げるとても大事な時期です。後々、納得のいくインテリアを手にできるかどうかは、ここでに実践した家具選びや収納などが大きく影響を及ぼします。 私は常々、この時期にこそ、基礎をしっかり押さえる本が必要じゃないかなと考えています。今回『独り暮らしをつくる100』に続き、新生活をゼロからスタートさせる本として『ふたりのすづくり』を描きました。
居住スペースも予算も余裕がなかった「独り暮らし」と「ふたり暮らし」では、大きな違いがあります。ふたり暮らしの住居には、ある程度の広さもあり、収納の為にスペースや所有物をぎりぎりまで切り詰める必要もありません。結婚するふたりなら家具を買い揃えるための予算も確保されるでしょう。一般家庭として普通に新居を構えるふたり。そんなふたり暮らしに「必要なことは何だろう?」それを問うことから、この本づくりは始まりました。
『ふたりのすづくり』キュレーターたち ↑第3章「収納」のミスれれれ
ふたりが居心地よく過ごせる住まい 私がふたり暮らしにとって、いちばん大切だと考えたのは「ふたりの居心地」です。独り暮らしでは、自分の趣味や考えを部屋に反映させるのが楽しく、その充実感に心支えられましたが、ふたり暮らしではパートナーと一緒に居る生活自体が心の支えになります。そのためには、ふたりが居心地よく毎日暮らせることが不可欠です。そして5年後も10年後も、その心地よさや人間関係は、変わらず続くものであって欲しい。 ふたり暮らしの心地よさをつくるポイントである、レイアウトのこと、家具の買い方、話し合い、ケンカのこと……。それらを本書の中にひょいひょいと散りばめ、大事なことがじんわりと、でも確かに伝わる内容にしました。 第5章「コーディネート」の いいおかめさん→
「時間」のないふたりのために そしてもう一つ、大切なのが「時間」でした。結婚を控えた周囲に聞けば、とにかく慌ただしく家具を選んでしまった、という人が多かったのです。働く女性が多い現代ではじっくりインテリアに手を掛けたくても、なかなか忙しさがそれを許しません。どうすればふたりが心地よいとインテリアを限られた時間で完成できるか? その解決として、今回の本は「インテリアの全容がすぐ解ること」を目指しました。ぱっと読めばインテリアの全容がつかめるという具合です。あいうえお作文風にポイントをまとめて、「フレーズ」で覚えられるようにしました。こうすれば彼と一緒に買い物に行った時も「家具選びは『ふさかみ』だな…」と口にし、手順や大事な事柄を思い出しながら、進められるんじゃないかな、と思ったのです(忙しいふたりが毎回本を読み返さなくてもいいように)。
ふたり暮らしへの想い
本の体裁は、「軽く楽しい気分で読める解りやすさ」に配慮しましたが、本の核となる部分には、ふたり暮らしへの強い想いがあります。 人間関係が良好であってはじめて、インテリアや生活の良さは実感できます。また逆に、インテリアや生活が良好なことで、心に余裕が生まれ、人間関係にもゆとりが出ます。インテリアと住む人の気持ちは常に相乗効果で保たれるものなのです。
他者と暮らす生活は楽しい反面、時に分かり合えない寂しさや難しさもあります。そして容易に全てを投げ出してしまえる脆さも、ふたりだけの生活には潜みます。そんな危うさも乗り越え、たくさんの人がよりよいインテリア、よりよい人間関係の中で、家に支えられて幸せな気分で日々過ごせたらいいのに、と願っています。
第1章「物件探し」に登場するごま上司→